《吾輩は猫である》

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吾輩は猫である- 第79部分


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证胜毪坤眰性が合わなければならないだろう。昔しなら文句はないさ、異体同心とか云って、目には夫婦二人に見えるが、内実は一人前(いちにんまえ)なんだからね。それだから偕老同穴(かいろうどうけつ)とか号して、死んでも一つ穴の狸に化ける。野蛮なものさ。今はそうは行かないやね。夫はあくまでも夫で妻はどうしたって妻だからね。その妻が女学校で行灯袴(あんどんばかま)を穿(は)いて牢乎(ろうこ)たる個性を鍛(きた)え上げて、束髪姿で仱贽zんでくるんだから、とても夫の思う通りになる訳がない。また夫の思い通りになるような妻なら妻じゃない人形だからね。賢夫人になればなるほど個性は凄(すご)いほど発達する。発達すればするほど夫と合わなくなる。合わなければ自然の勢(いきおい)夫と衝突する。だから賢妻と名がつく以上は朝から晩まで夫と衝突している。まことに結構な事だが、賢妻を迎えれば迎えるほど双方共苦しみの程度が増してくる。水と油のように夫婦の間には截然(せつぜん)たるしきりがあって、それも落ちついて、しきりが水平線を保っていればまだしもだが、水と油が双方から働らきかけるのだから家のなかは大地震のように上がったり下がったりする。ここにおいて夫婦雑居はお互の損だと云う事が次第に人間に分ってくる。……」

 。。 



十一 … 21

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「それで夫婦がわかれるんですか。心配だな」と寒月君が云った。

「わかれる。きっとわかれる。天下の夫婦はみんな分れる。今まではいっしょにいたのが夫婦であったが、これからは同棲(どうせい)しているものは夫婦の資格がないように世間から目(もく)されてくる」

「すると私なぞは資格のない組へ編入される訳ですね」と寒月君は際(きわ)どいところでのろけを云った。

「明治の御代(みよ)に生れて幸さ。僕などは未来記を作るだけあって、頭脳が時勢より一二歩ずつ前へ出ているからちゃんと今から独身でいるんだよ。人は失恋の結果だなどと騒ぐが、近眼者の視(み)るところは実に憐れなほど浅薄なものだ。それはとにかく、未来記の続きを話すとこうさ。その時一人の哲学者が天降(あまくだ)って破天荒(はてんこう)の真理を唱道する。その説に曰(いわ)くさ。人間は個性の動物である。個性を滅すれば人間を滅すると同結果に陥(おちい)る。いやしくも人間の意義を完(まった)からしめんためには、いかなる価(あたい)を払うとも構わないからこの個性を保持すると同時に発達せしめなければならん。かの陋習(ろうしゅう)に俊护椁欷啤ⅳい浃い浃胜榻Y婚を執行するのは人間自然の傾向に反した蛮風であって、個性の発達せざる蒙昧(もうまい)の時代はいざ知らず、文明の今日(こんにち)なおこの弊福Вà丐い趣Γ─岁垼à沥ぃ─盲铺瘢à皮螅─趣筏祁櫍àà辏─撙胜い韦悉悉胜悉坤筏囈姡à婴澶Δ堡螅─扦ⅳ搿i_化の高潮度に達せる今代(きんだい)において二個の個性が普通以上に親密の程度をもって連結され得べき理由のあるべきはずがない。この覩易(みやす)き理由はあるにも関らず無教育の青年男女が一時の劣情に駆られて、漫(みだり)に合 (ごうきん)の式を挙ぐるは悖徳没倫(はいとくぼつりん)のはなはだしき所為である。吾人は人道のため、文明のため、彼等青年男女の個性保護のため、全力を挙げこの蛮風に抵抗せざるべからず……」

「先生私はその説には全然反対です」と枺L君はこの時思い切った眨婴扦预郡辘绕绞郑à窑椁疲─窍ヮ^(ひざがしら)を叩いた。「私の考では世の中に何が尊(たっと)いと云って愛と美ほど尊いものはないと思います。吾々を慰藉(いしゃ)し、吾々を完全にし、吾々を幸福にするのは全く両者の御蔭であります。吾人の情操を優美にし、品性を高潔にし、同情を洗錬するのは全く両者の御蔭であります。だから吾人はいつの世いずくに生れてもこの二つのものを忘れることが出来ないです。この二つの者が現実世界にあらわれると、愛は夫婦と云う関係になります。美は詩歌(しいか)、音楽の形式に分れます。それだからいやしくも人類の地球の表面に存在する限りは夫婦と芸術は決して滅する事はなかろうと思います」

「なければ結構だが、今哲学者が云った通りちゃんと滅してしまうから仕方がないと、あきらめるさ。なに芸術だ? 芸術だって夫婦と同じ呙藥⒆扭工毪韦怠性の発展というのは個性の自由と云う意味だろう。個性の自由と云う意味はおれはおれ、人は人と云う意味だろう。その芸術なんか存在出来る訳がないじゃないか。芸術が繁昌するのは芸術家と享受者(きょうじゅしゃ)の間に個性の一致があるからだろう。君がいくら新体詩家だって踏張(ふんば)っても、君の詩を読んで面白いと云うものが一人もなくっちゃ、君の新体詩も御気の毒だが君よりほかに読み手はなくなる訳だろう。鴛鴦歌(えんおうか)をいく篇作ったって始まらないやね。幸いに明治の今日(こんにち)に生れたから、天下が挙(こぞ)って愛読するのだろうが……」

「いえそれほどでもありません」

「今でさえそれほどでなければ、人文(じんぶん)の発達した未来即(すなわ)ち例の一大哲学者が出て非結婚論を主張する時分には誰もよみ手はなくなるぜ。いや君のだから読まないのじゃない。人々個々(にんにんここ)おのおの特別の個性をもってるから、人の作った詩文などは一向(いっこう)面白くないのさ。現に今でも英国などではこの傾向がちゃんとあらわれている。現今英国の小説家中でもっとも個性のいちじるしい作品にあらわれた、メレジスを見給え、ジェ啷工蛞娊oえ。読み手は極(きわ)めて少ないじゃないか。少ない訳(わけ)さ。あんな作品はあんな個性のある人でなければ読んで面白くないんだから仕方がない。この傾向がだんだん発達して婚姻が不道徳になる時分には芸術も完(まった)く滅亡さ。そうだろう君のかいたものは僕にわからなくなる、僕のかいたものは君にわからなくなった日にゃ、君と僕の間には芸術も糞もないじゃないか」

「そりゃそうですけれども私はどうも直覚的にそう思われないんです」

「君が直覚的にそう思われなければ、僕は曲覚的(きょっかくてき)にそう思うまでさ」

「曲覚的かも知れないが」と今度は独仙君が口を出す。「とにかく人間に個性の自由を許せば許すほど御互の間が窮屈になるに相摺胜い琛%拴‘チェが超人なんか担(かつ)ぎ出すのも全くこの窮屈のやりどころがなくなって仕方なしにあんな哲学に変形したものだね。ちょっと見るとあれがあの男の理想のように見えるが、ありゃ理想じゃない、不平さ。個性の発展した十九世紀にすくんで、隣りの人には心置なく滅多(めった)に寝返りも打てないから、大将少しやけになってあんな乱暴をかき散らしたのだね。あれを読むと壮快と云うよりむしろ気の毒になる。あの声は勇猛精進(ゆうもうしょうじん)の声じゃない、どうしても怨恨痛憤(えんこんつうふん)の音(おん)だ。それもそのはずさ昔は一人えらい人があれば天下翕然(きゅうぜん)としてその旗下にあつまるのだから、愉快なものさ。こんな愉快が事実に出てくれば何もニ隶б姢郡瑜Δ斯Pと紙の力でこれを書物の上にあらわす必要がない。だからホ蕞‘でもチェヴィ·チェ氦扦馔袱说膜市愿瘠蛐搐筏皮飧肖袱蓼毪沁‘うからね。陽気ださ。愉快にかいてある。愉快な事実があって、この愉快な事実を紙に写しかえたのだから、苦味(にがみ)はないはずだ。ニ隶Г螘r代はそうは行かないよ。英雄なんか一人も出やしない。出たって誰も英雄と立てやしない。昔は孔子(こうし)がたった一人だったから、孔子も幅を利(き)かしたのだが、今は孔子が幾人もいる。ことによると天下がことごとく孔子かも知れない。だからおれは孔子だよと威張っても圧(おし)が利かない。利かないから不平だ。不平だから超人などを書物の上だけで振り廻すのさ。吾人は自由を欲して自由を得た。自由を得た結果不自由を感じて困っている。それだから西洋の文明などはちょっといいようでもつまり駄目なものさ。これに反して枺螭袱阄簸筏樾膜涡扌肖颏筏俊¥饯畏饯筏い韦怠R娊oえ個性発展の結果みんな神経衰弱を起して、始末がつかなくなった時、王者(おうしゃ)の民(たみ)蕩々(とうとう)たりと云う句の価値を始めて発見するから。無為(むい)にして化(か)すと云う語の馬鹿に出来ない事を悟るから。しかし悟ったってその時はもうしようがない。アルコ胫卸兢祟荆à─盲啤ⅳⅳ⒕皮蝻嫟蓼胜堡欷肖瑜盲郡瓤激à毪瑜Δ胜猡韦怠





十一 … 22


「先生方は大分(だいぶ)厭世的な御説のようだが、私は妙ですね。いろいろ伺っても何とも感じません。どう云うものでしょう」と寒月君が云う。

「そりゃ妻君を持ち立てだからさ」と迷亭君がすぐ解釈した。すると主人が突然こんな事を云い出した。

「妻(さい)を持って、女はいいものだなどと思うと飛んだ間摺摔胜搿2慰激韦郡幛坤椤ⅳ欷姘驻の铯蛘iんで聞かせる。よく聴くがいい」と最前(さいぜん)書斎から持って来た古い本を取り上げて「この本は古い本だが、この時代から女のわるい事は歴然と分ってる」と云うと、寒月君が

「少し驚きましたな。元来いつ頃の本ですか」と聞く。「タマス·ナッシと云って十六世紀の著書だ」

「いよいよ驚ろいた。その時分すでに私の妻(さい)の悪口を云ったものがあるんですか」

「いろいろ女の悪口があるが、その内には是非君の妻(さい)も這入る訳だから聞くがいい」

「ええ聞きますよ。ありがたい事になりましたね」

「まず古来の賢哲が女性観を紹介すべしと書いてある。いいかね。聞いてるかね」

「みんな聞いてるよ。独身の僕まで聞いてるよ」

「アリスト去朐唬àい铮─悉嗓Δ宦担à恧─扦胜筏胜欷小⒓蓼颏趣毪胜椤⒋螭始蓼瑜晷·丹始蓼颏趣毪伽贰4螭事丹扦胜筏瑜辍⑿·丹事丹扦胜筏畏饯瑸模à铯钉铯ぃ┥伽胜贰

「寒月君の妻君は大きいかい、小さいかい」

「大きな碌でなしの部ですよ」

「ハハハハ、こりゃ面白い本だ。さああとを読んだ」

「或る人問う、いかなるかこれ最大奇蹟(さいだいきせき)。賢者答えて曰く、貞婦……」

「賢者ってだれですか」

「名前は書いてない」

「どうせ振られた賢者に相摺胜い汀

「次にはダイオジニスが出ている。或る人問う、妻を娶(めと)るいずれの時においてすべきか。ダイオジニス答えて曰く青年は未(いま)だし、老年はすでに遅し。とある」

「先生樽(たる)の中で考えたね」

「ピサゴラス曰(いわ)く天下に三の恐るべきものあり曰く火、曰く水、曰く女」

「希臘(ギリシャ)の哲学者などは存外迂濶(うかつ)な事を云うものだね。僕に云わせると天下に恐るべきものなし。火に入(い)って焼けず、水に入って溺れず……」だけで独仙君ちょっと行き詰る。

「女に逢ってとろけずだろう」と迷亭先生が援兵に出る。主人はさっさとあとを読む。

「ソクラチスは婦女子を御(ぎょ)するは人間の最大難事と云えり。デモスセニス曰く人もしその敵を苦しめんとせば、わが女を敵に与うるより策の得たるはあらず。家庭の風波に日となく夜(よ)となく彼を困憊(こんぱい)起つあたわざるに至らしむるを得ればなりと。セネカは婦女と無学をもっ
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