《吾輩は猫である》

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吾輩は猫である- 第53部分


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「知らない。それがどうしたのさ」

「その男が笑い過ぎて死んだんだ」

「へえⅳ饯い膜喜凰甲hだね、しかしそりゃ昔の事だから……」

「昔しだって今だって変りがあるものか。驢馬(ろば)が銀の丼(どんぶり)から無花果(いちじゅく)を食うのを見て、おかしくってたまらなくって無暗(むやみ)に笑ったんだ。ところがどうしても笑いがとまらない。とうとう笑い死にに死んだんだあね」

「はははしかしそんなに留(と)め度(ど)もなく笑わなくってもいいさ。少し笑う――適宜(てきぎ)に、――そうするといい心持ちだ」

鈴木君がしきりに主人の動静を研究していると、表の門ががらがらとあく、客来(きゃくらい)かと思うとそうでない。

「ちょっとボ毪@入(はい)りましたから、取らして下さい」

下女は台所から「はい」と答える。書生は裏手へ廻る。鈴木は妙な顔をして何だいと聞く。

「裏の書生がボ毪蛲イ赝钉厕zんだんだ」

「裏の書生? 裏に書生がいるのかい」

「落雲館と云う学校さ」

「ああそうか、学校か。随分騒々しいだろうね」

「騒々しいの何のって。碌々(ろくろく)勉強も出来やしない。僕が文部大臣なら早速椋фiを命じてやる」

「ハハハ大分(だいぶ)怒(おこ)ったね。何か癪(しゃく)に障(さわ)る事でも有るのかい」

「あるのないのって、朝から晩まで癪に障り続けだ」

「そんなに癪に障るなら越せばいいじゃないか」

「誰が越すもんか、失敬千万な」

「僕に怒ったって仕方がない。なあに小供だあね、打(うっ)ちゃっておけばいいさ」

「君はよかろうが僕はよくない。昨日(きのう)は教師を呼びつけて談判してやった」

「それは面白かったね。恐れ入ったろう」

「うん」

この時また門口(かどぐち)をあけて「ちょっとボ毪@入(はい)りましたから取らして下さい」と云う声がする。

「いや大分(だいぶ)来るじゃないか、またボ毪坤季

「うん、表から来るように契約したんだ」

「なるほどそれであんなにくるんだね。そう⒎证盲俊

「何が分ったんだい」

「なに、ボ毪蛉·辘摔朐匆颏怠

「今日はこれで十六返目だ」

「君うるさくないか。来ないようにしたらいいじゃないか」

「来ないようにするったって、来るから仕方がないさ」

「仕方がないと云えばそれまでだが、そう頑固(がんこ)にしていないでもよかろう。人間は角(かど)があると世の中を転(ころ)がって行くのが骨が折れて損だよ。丸いものはごろごろどこへでも苦(く)なしに行けるが四角なものはころがるに骨が折れるばかりじゃない、転がるたびに角がすれて痛いものだ。どうせ自分一人の世の中じゃなし、そう自分の思うように人はならないさ。まあ何だね。どうしても金のあるものに、たてを突いちゃ損だね。ただ神経ばかり痛めて、からだは悪くなる、人は褒(ほ)めてくれず。向うは平気なものさ。坐って人を使いさえすればすむんだから。多勢(たぜい)に無勢(ぶぜい)どうせ、叶(かな)わないのは知れているさ。頑固もいいが、立て通すつもりでいるうちに、自分の勉強に障ったり、毎日の業務に煩(はん)を及ぼしたり、とどのつまりが骨折り損の草臥儲(くたびれもう)けだからね」

「ご免なさい。今ちょっとボ毪wびましたから、裏口へ廻って、取ってもいいですか」

「そらまた来たぜ」と鈴木君は笑っている。

「失敬な」と主人は真赤(まっか)になっている。

鈴木君はもう大概訪問の意を果したと思ったから、それじゃ失敬ちと来(き)たまえと帰って行く。

入れ代ってやって来たのが甘木(あまき)先生である。逆上家が自分で逆上家だと名仱胝撙衔簦à啶─筏槔伽胜ぁⅳ长欷仙佟〾浃坤胜纫櫍à丹龋─盲繒rは逆上の峠(とうげ)はもう越している。主人の逆上は昨日(きのう)の大事件の際に最高度に達したのであるが、談判も竜頭蛇尾たるに係(かかわ)らず、どうかこうか始末がついたのでその晩書斎でつくづく考えて見ると少し変だと気が付いた。もっとも落雲館が変なのか、自分が変なのか疑(うたがい)を存する余地は充分あるが、何しろ変に摺胜ぁ¥い橹醒¥坞Oに居を構えたって、かくのごとく年が年中肝癪(かんしゃく)を起しつづけはちと変だと気が付いた。変であって見ればどうかしなければならん。どうするったって仕方がない、やはり医者の薬でも飲んで肝癪(かんしゃく)の源(みなもと)に賄賂(わいろ)でも使って慰撫(いぶ)するよりほかに道はない。こう覚(さと)ったから平生かかりつけの甘木先生を迎えて圆欷蚴埭堡埔姢瑜Δ仍皮α恳姢蚱黏筏郡韦扦ⅳ搿Ytか愚か、その辺は別問睿趣筏啤ⅳ趣摔苑证文嫔悉藲荬钉い郡坤堡鲜鈩伲à筏澶筏绀Γ─沃尽⑵嫣兀à嗓─涡牡盲仍皮铯胜堡欷肖胜椁蟆8誓鞠壬侠韦搐趣摔长摔长嚷浃沥膜瓛Bって、「どうです」と云う。医者は大抵どうですと云うに極(き)まってる。吾輩は「どうです」と云わない医者はどうも信用をおく気にならん。

「先生どうも駄目ですよ」

「え、何そんな事があるものですか」

「一体医者の薬は利(き)くものでしょうか」

甘木先生も驚ろいたが、そこは温厚の長者(ちょうじゃ)だから、別段激した様子もなく、

「利かん事もないです」と穏(おだや)かに答えた。

「私(わたし)の胃病なんか、いくら薬を飲んでも同じ事ですぜ」

「決して、そんな事はない」

「ないですかな。少しは善くなりますかな」と自分の胃の事を人に聞いて見る。

「そう急には、癒(なお)りません、だんだん利きます。今でももとより大分(だいぶ)よくなっています」

「そうですかな」

「やはり肝癪(かんしゃく)が起りますか」

「起りますとも、夢にまで肝癪を起します」

「邉婴扦狻⑸伽筏胜丹盲郡椁いい扦筏绀Α

「邉婴工毪取ⅳ胜伟^が起ります」

甘木先生もあきれ返ったものと見えて、

「どれ一つ拝見しましょうか」と圆欷蚴激幛搿T察を終るのを待ちかねた主人は、突然大きな声を出して、

「先生、せんだって催眠術のかいてある本を読んだら、催眠術を応用して手癖のわるいんだの、いろいろな病気だのを直す事が出来ると書いてあったですが、本当でしょうか」と聞く。

 。。



八 … 11

…小……说。网
「ええ、そう云う療法もあります」

「今でもやるんですか」

「ええ」

「催眠術をかけるのはむずかしいものでしょうか」

「なに訳はありません、私(わたし)などもよく懸けます」

「先生もやるんですか」

「ええ、一つやって見ましょうか。誰でも懸(かか)らなければならん理窟(りくつ)のものです。あなたさえ善(よ)ければ懸けて見ましょう」

「そいつは面白い、一つ懸けて下さい。私(わたし)もとうから懸かって見たいと思ったんです。しかし懸かりきりで眼が覚(さ)めないと困るな」

「なに大丈夫です。それじゃやりましょう」

相談はたちまち一決して、主人はいよいよ催眠術を懸けらるる事となった。吾輩は今までこんな事を見た事がないから心ひそかに喜んでその結果を座敷の隅から拝見する。先生はまず、主人の眼からかけ始めた。その方法を見ていると、両眼(りょうがん)の上瞼(うわまぶた)を上から下へと撫(な)でて、主人がすでに眼を眠(ねむ)っているにも係(かかわ)らず、しきりに同じ方向へくせを付けたがっている。しばらくすると先生は主人に向って「こうやって、瞼(まぶた)を撫でていると、だんだん眼が重たくなるでしょう」と聞いた。主人は「なるほど重くなりますな」と答える。先生はなお同じように撫でおろし、撫でおろし「だんだん重くなりますよ、ようござんすか」と云う。主人もその気になったものか、何とも云わずに黙っている。同じ摩擦法はまた三四分繰り返される。最後に甘木先生は「さあもう開(あ)きませんぜ」と云われた。可哀想(かわいそう)に主人の眼はとうとう潰(つぶ)れてしまった。「もう開かんのですか」「ええもうあきません」主人は黙然(もくねん)として目を眠っている。吾輩は主人がもう盲目(めくら)になったものと思い込んでしまった。しばらくして先生は「あけるなら開いて御覧なさい。とうていあけないから」と云われる。「そうですか」と云うが早いか主人は普通の通り両眼(りょうがん)を開いていた。主人はにやにや笑いながら「懸かりませんな」と云うと甘木先生も同じく笑いながら「ええ、懸りません」と云う。催眠術はついに不成功に了(おわ)る。甘木先生も帰る。

その次に来たのが――主人のうちへこのくらい客の来た事はない。交際の少ない主人の家にしてはまるで嘘(うそ)のようである。しかし来たに相摺胜ぁ¥筏庹淇亭搐俊N彷叅长握淇亭问陇蛞谎裕àい沥搐螅─扦庥浭訾工毪韦蠀gに珍客であるがためではない。吾輩は先刻申す通り大事件の余瀾(よらん)を描(えが)きつつある。しかしてこの珍客はこの余瀾を描くに方(あた)って逸すべからざる材料である。何と云う名前か知らん、ただ顔の長い上に、山羊(やぎ)のような髯(ひげ)を生(は)やしている四十前後の男と云えばよかろう。迷亭の美学者たるに対して、吾輩はこの男を哲学者と呼ぶつもりである。なぜ哲学者と云うと、何も迷亭のように自分で振り散らすからではない、ただ主人と対話する時の様子を拝見しているといかにも哲学者らしく思われるからである。これも昔(むか)しの同窓と見えて両人共(ふたりとも)応対振りは至極(しごく)打(う)ち解(と)けた有様だ。

「うん迷亭か、あれは池に浮いてる金魚麩(きんぎょふ)のようにふわふわしているね。せんだって友人を連れて一面識もない華族の門前を通行した時、ちょっと寄って茶でも飲んで行こうと云って引っ張り込んだそうだが随分呑気(のんき)だね」

「それでどうしたい」

「どうしたか聞いても見なかったが、――そうさ、まあ天稟(てんぴん)の奇人だろう、その代り考も何もない全く金魚麩だ。鈴木か、――あれがくるのかい、へえⅳⅳ欷侠砜撸à辘模─悉铯椁螭篱g的には利口な男だ。金時計は下げられるたちだ。しかし奥行きがないから落ちつきがなくって駄目だ。円滑(えんかつ)円滑と云うが、円滑の意味も何もわかりはせんよ。迷亭が金魚麩ならあれは藁(わら)で括(くく)った蒟蒻(こんにゃく)だね。ただわるく滑(なめら)かでぶるぶる振(ふる)えているばかりだ」

主人はこの奇警(きけい)な比喩(ひゆ)を聞いて、大(おおい)に感心したものらしく、久し振りでハハハと笑った。

「そんなら君は何だい」

「僕か、そうさな僕なんかは――まあ自然薯(じねんじょ)くらいなところだろう。長くなって泥の中に埋(うま)ってるさ」

「君は始終泰然として気楽なようだが、羨(うらや)ましいな」

「なに普通の人間と同じようにしているばかりさ。別に羨まれるに足るほどの事もない。ただありがたい事に人を羨む気も起らんから、それだけいいね」

「会計は近頃豊かかね」

「なに同じ事さ。足るや足らずさ。しかし食うているから大丈夫。驚かないよ」

「僕は不愉快で、肝癪(かんしゃく)が起ってたまらん。どっちを向いても不平ばかりだ」

「不平もいいさ。不平が起ったら起してしまえば当分はいい心持ち
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