《吾輩は猫である》

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吾輩は猫である- 第22部分


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る鼻のごときは、もっとも発達せるもっとも偉大なる天下の珍品として御両君に紹介しておきたいと思います」寒月君は思わずヒヤヤヤと云う。「しかし物も極度に達しますと偉観には相摺搐钉い蓼护螭韦趣胜溃à饯恚─筏平扭yいものであります。あの鼻梁(びりょう)などは素晴しいには摺い搐钉い蓼护螭⑸佟┚䦷M(しゅんけん)過ぎるかと思われます。古人のうちにてもソクラチス、ゴ毳丧攻撺工猡筏膝单氓飑‘の鼻などは構造の上から云うと随分申し分はございましょうがその申し分のあるところに愛嬌(あいきょう)がございます。鼻高きが故に貴(たっと)からず、奇(き)なるがために貴しとはこの故でもございましょうか。下世話(げせわ)にも鼻より団子と申しますれば美的価値から申しますとまず迷亭くらいのところが適当かと存じます」寒月と主人は「フフフフ」と笑い出す。迷亭自身も愉快そうに笑う。「さてただ今(いま)まで弁じましたのは――」「先生弁じましたは少し講釈師のようで下品ですから、よしていただきましょう」と寒月君は先日の復讐(ふくしゅう)をやる。「さようしからば顔を洗って出直しましょうかな。――ええ――これから鼻と顔の権衡(けんこう)に一言(いちごん)論及したいと思います。他に関係なく単独に鼻論をやりますと、かの御母堂などはどこへ出しても恥ずかしからぬ鼻――鞍馬山(くらまやま)で展覧会があっても恐らく一等賞だろうと思われるくらいな鼻を所有していらせられますが、悲しいかなあれは眼、口、その他の諸先生と何等の相談もなく出来上った鼻であります。ジュリアス·シ订‘の鼻は大したものに相摺搐钉い蓼护蟆¥筏伐珐‘ザ伪扦蜾e(はさみ)でちょん切って、当家の猫の顔へ安置したらどんな者でございましょうか。喩(たと)えにも猫の額(ひたい)と云うくらいな地面へ、英雄の鼻柱が突兀(とっこつ)として聳(そび)えたら、碁盤の上へ奈良の大仏を据(す)え付けたようなもので、少しく比例を失するの極、その美的価値を落す事だろうと思います。御母堂の鼻はシ订‘のそれのごとく、正(まさ)しく英姿颯爽(えいしさっそう)たる隆起に相摺搐钉い蓼护蟆¥筏筏饯沃車欷驀炖@(いにょう)する顔面的条件は如何(いかが)な者でありましょう。無論当家の猫のごとく劣等ではない。しかし癲癇病(てんかんや)みの御かめのごとく眉(まゆ)の根に八字を刻んで、細い眼を釣るし上げらるるのは事実であります。諸君、この顔にしてこの鼻ありと嘆ぜざるを得んではありませんか」迷亭の言葉が少し途切れる途端(とたん)、裏の方で「まだ鼻の話しをしているんだよ。何てえ剛突(ごうつ)く張(ばり)だろう」と云う声が聞える。「車屋の神さんだ」と主人が迷亭に教えてやる。迷亭はまたやり初める。「計らざる裏手にあたって、新たに異性の傍聴者のある事を発見したのは演者の深く名誉と思うところであります。ことに宛転(えんてん)たる嬌音(きょうおん)をもって、乾燥なる講筵(こうえん)に一点の艶味(えんみ)を添えられたのは実に望外の幸福であります。なるべく通俗的に引き直して佳人淑女(かじんしゅくじょ)の眷顧(けんこ)に背(そむ)かざらん事を期する訳でありますが、これからは少々力学上の問睿肆ⅳ寥毪辘蓼工韦恰荩àいぃ┯鶍D人方には御分りにくいかも知れません、どうか御辛防(ごしんぼう)を願います」寒月君は力学と云う語を聞いてまたにやにやする。「私の証拠立てようとするのは、この鼻とこの顔は到底眨亭筏胜ぁ%磨ˉぅ伐螗挨位平鹇嗓蚴Г筏皮い毪仍皮κ陇胜螭恰ⅳ饯欷騾椄瘠肆ρ悉喂饯檠堇'(えんえき)して御覧に入れようと云うのであります。まずHを鼻の高さとします。αは鼻と顔の平面の交叉より生ずる角度であります。は無論鼻の重量と御承知下さい。どうです大抵お分りになりましたか。……」「分るものか」と主人が云う。「寒月君はどうだい」「私にもちと分りかねますな」「そりゃ困ったな。苦沙弥(くしゃみ)はとにかく、君は理学士だから分るだろうと思ったのに。この式が演説の首脳なんだからこれを略しては今までやった甲斐(かい)がないのだが――まあ仕方がない。公式は略して結論だけ話そう」「結論があるか」と主人が不思議そうに聞く。「当り前さ結論のない演舌は、デザ趣韦胜の餮罅侠恧韦瑜Δ胜猡韦馈ⅷD―いいか両君能(よ)く聞き給え、これからが結論だぜ。――さて以上の公式にウィルヒョウ、ワイスマン諸家の説を参酌して考えて見ますと、先天的形体の遺伝は無論の事許さねばなりません。またこの形体に追陪(ついばい)して起る心意的状況は、たとい後天性は遺伝するものにあらずとの有力なる説あるにも関せず、ある程度までは必然の結果と認めねばなりません。従ってかくのごとく身分に不似合なる鼻の持主の生んだ子には、その鼻にも何か異状がある事と察せられます。寒月君などは、まだ年が御若いから金田令嬢の鼻の構造において特別の異状を認められんかも知れませんが、かかる遺伝は潜伏期の長いものでありますから、いつ何時(なんどき)気候の劇変と共に、急に発達して御母堂のそれのごとく、咄嗟(とっさ)の間(かん)に膨脹(ぼうちょう)するかも知れません、それ故にこの御婚儀は、迷亭の学理的論証によりますと、今の中御断念になった方が安全かと思われます、これには当家の御主人は無論の事、そこに寝ておらるる猫又殿(ねこまたどの)にも御異存は無かろうと存じます」主人はようよう起き返って「そりゃ無論さ。あんなものの娘を誰が貰うものか。寒月君もらっちゃいかんよ」と大変熱心に主張する。吾輩もいささか賛成の意を表するためににゃ摔悌‘と二声ばかり鳴いて見せる。寒月君は別段騒いだ様子もなく「先生方の御意向がそうなら、私は断念してもいいんですが、もし当人がそれを気にして病気にでもなったら罪ですから――」「ハハハハハ艶罪(えんざい)と云う訳(わけ)だ」主人だけは大(おおい)にむきになって「そんな馬鹿があるものか、あいつの娘なら碌(ろく)な者でないに極(きま)ってらあ。初めて人のうちへ来ておれをやり込めに掛った奴だ。傲慢(ごうまん)な奴だ」と独(ひと)りでぷんぷんする。するとまた垣根のそばで三四人が「ワハハハハハ」と云う声がする。一人が「高慢ちきな唐変木(とうへんぼく)だ」と云うと一人が「もっと大きな家(うち)へ這入(はい)りてえだろう」と云う。また一人が「御気の毒だが、いくら威張ったって蔭弁慶(かげべんけい)だ」と大きな声をする。主人は椽側(えんがわ)へ出て負けないような声で「やかましい、何だわざわざそんな塀(へい)の下へ来て」と怒鳴(どな)る。「ワハハハハハサヴェジ·チ馈ⅴ单籁Д浮ぅ俩‘だ」と口々に罵(のの)しる。主人は大(おおい)に逆鳎Вà菠辘螅─翁澹à皮ぃ─峭蝗黄穑à浚─盲匹攻匹氓虺证盲啤⑼搐仫wび出す。迷亭は手を拍(う)って「面白い、やれやれ」と云う。寒月は羽織の紐を撚(ひね)ってにやにやする。吾輩は主人のあとを付けて垣の崩れから往来へ出て見たら、真中に主人が手持無沙汰にステッキを突いて立っている。人通りは一人もない、ちょっと狐(きつね)に抓(つま)まれた体(てい)である。

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四 … 1

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例によって金田邸へ忍び込む。

例によってとは今更(いまさら)解釈する必要もない。しばしばを自仯à袱袱绀Γ─筏郡郅嗓味群悉蚴兢拐Z(ことば)である。一度やった事は二度やりたいもので、二度試みた事は三度試みたいのは人間にのみ限らるる好奇心ではない、猫といえどもこの心理的特権を有してこの世界に生れ出でたものと認定していただかねばならぬ。三度以上繰返す時始めて習慣なる語を冠せられて、この行為が生活上の必要と進化するのもまた人間と相摺悉胜ぁ:韦韦郡幛恕ⅳ蓼亲惴保àⅳ筏筏玻─鹛镗·赝àΔ韦炔粚彜蚱黏工胜椁饯吻挨摔沥绀盲热碎gに反問したい事がある。なぜ人間は口から煙を吸い込んで鼻から吐き出すのであるか、腹の足(た)しにも血の道の薬にもならないものを、恥(はず)かし気(げ)もなく吐呑(とどん)して憚(はば)からざる以上は、吾輩が金田に出入(しゅつにゅう)するのを、あまり大きな声で咎(とが)め立(だ)てをして貰いたくない。金田邸は吾輩の煙草(たばこ)である。

忍び込むと云うと語弊がある、何だか泥棒か間男(まおとこ)のようで聞き苦しい。吾輩が金田邸へ行くのは、招待こそ受けないが、決して鰹(かつお)の切身(きりみ)をちょろまかしたり、眼鼻が顔の中心に痙攣的(けいれんてき)に密着している狆(ちん)君などと密談するためではない。――何探偵?――もってのほかの事である。およそ世の中に何が賤(いや)しい家業(かぎょう)だと云って探偵と高利貸ほど下等な職はないと思っている。なるほど寒月君のために猫にあるまじきほどの義侠心(ぎきょうしん)を起して、一度(ひとたび)は金田家の動静を余所(よそ)ながら窺(うかが)った事はあるが、それはただの一遍で、その後は決して猫の良心に恥ずるような陋劣(ろうれつ)な振舞を致した事はない。――そんなら、なぜ忍び込むと云(い)うような胡乱(うろん)な文字を使用した?――さあ、それがすこぶる意味のある事だて。元来吾輩の考によると大空(たいくう)は万物を覆(おお)うため大地は万物を載(の)せるために出来ている――いかに執拗(しつよう)な議論を好む人間でもこの事実を否定する訳には行くまい。さてこの大空大地(たいくうだいち)を製造するために彼等人類はどのくらいの労力を費(つい)やしているかと云うと尺寸(せきすん)の手伝もしておらぬではないか。自分が製造しておらぬものを自分の所有と極(き)める法はなかろう。自分の所有と極めても差(さ)し支(つか)えないが他の出入(しゅつにゅう)を禁ずる理由はあるまい。この茫々(ぼうぼう)たる大地を、小賢(こざか)しくも垣を囲(めぐ)らし棒杭(ぼうぐい)を立てて某々所有地などと劃(かく)し限るのはあたかもかの蒼天(そうてん)に縄張(なわばり)して、この部分は我(われ)の天、あの部分は彼(かれ)の天と届け出るような者だ。もし土地を切り刻んで一坪いくらの所有権を売買するなら我等が呼吸する空気を一尺立方に割って切売をしても善い訳である。空気の切売が出来ず、空の縄張が不当なら地面の私有も不合理ではないか。如是観(にょぜかん)によりて、如是法(にょぜほう)を信じている吾輩はそれだからどこへでも這入(はい)って行く。もっとも行きたくない処へは行かぬが、志す方角へは枺髂媳堡尾顒eは入らぬ、平気な顔をして、のそのそと参る。金田ごときものに遠懀Г颏工朐Uがない。――しかし猫の悲しさは力ずくでは到底(とうてい)人間には叶(かな)わない。強勢は権利なりとの格言さえあるこの浮世に存在する以上は、いかにこっちに道理があっても猫の議論は通らない。無理に通そうとすると車屋の韦搐趣灰猡穗任荩à丹胜洌─翁斐影簦à皮螭婴螭埭Γ─騿校à椋─证欷ⅳ搿@恧悉长盲沥摔ⅳ毪瑯亓Δ舷颏Δ摔ⅳ毪仍皮龊悉恕⒗恧蚯菠埔护舛猡胜鼜兢工毪ⅳ蓼郡蠘亓Δ文郡蚵樱à梗─幛莆依恧蜇灓仍皮à小⑽彷叅蠠o論後者を択(えら)ぶのである。天秤棒は避けざるべからざるが故に、忍ばざるべからず
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